
もくじ
春 ― はじまりの音

風がやわらかくなった朝。
窓を開けると、淡い光が差し込み、
冬の名残を少しだけ溶かしていきます。
ウクレレを手に取ると、指先に木のぬくもり。
弦をひとつ、そっとはじく。
ポロ~ン・・・
その音が、まだ眠っていた空気をやさしく揺らします。
まるで春の息吹そのもののように。
庭の梅がほころび、鳥たちがさえずり、
遠くで子どもたちの笑い声が響きます。
春は、音が増える季節です。
風の音、花の音、心の音。
その中でウクレレの音が重なると、
世界が少し明るく見えてくる。
心の奥が、ゆっくりと色づきはじめる。
「今年もまた、何かを始めてみようかな」
そんな気持ちが、音に導かれるように芽吹いていきます。
夏 ― 光と風のリズム

太陽が高く昇る。
空の青さが、どこまでも広がっていく。
風が通り抜け、カーテンがふわりと揺れる午後。
その風のリズムに合わせるように、
ウクレレをポロ~ン・・・と鳴らします。
軽やかなストロークが、夏の光を跳ね返し、
音が空気の中で踊り出します。
海辺で聴く波の音。
セミの合唱。
夕立のあとに残る、土と緑の匂い。
夏の音は、生命の鼓動そのもの。
その中にウクレレが溶け込むと、
まるで自然と一緒に呼吸しているような気持ちになります。
夕暮れどき。
窓から差し込む光がオレンジ色に変わるころ、
「今日もよくがんばったね」と、
音がやさしく語りかけてくるようです。
冷たい麦茶を飲みながら、
ポロ~ン・・・と一音。
夏の音が、心の奥に静かに沈んでいきます。
秋 ― 音が染まる夕暮れ

風が少し冷たくなると、
ウクレレの音が、なぜか深く響くようになります。
木々の葉が色づき、空気が透明になる秋。
音が遠くまで届く季節です。
窓辺に座り、弦を指でなでる。
ポロ~ン・・・
その音は、金色の風に乗ってどこかへ流れていきます。
夕暮れの光が部屋の中に差し込み、
影が少し長く伸びていく。
その影の中に、静かな音が溶けていく。
秋は、「聴く季節」。
自然の音を聴き、自分の心の音を聴く。
少し寂しさを感じる夕暮れも、
ウクレレの音があれば、
それが“あたたかい静けさ”に変わります。
誰かの顔を思い出したり、
過ぎた時間をそっと抱きしめたり。
音が記憶を包み込むように、
優しく心をなでてくれるのです。
冬 ― やさしい静寂

冬の朝。
外の空気は張りつめ、世界は白く息を潜めています。
ストーブの上でお湯が小さく沸く音。
カーテンの隙間から差す淡い光。
そんな静かな時間に、
ウクレレの音は、そっと灯りをともすように響きます。
冷えた指先で弦を押さえ、音を鳴らす。
ポロ~ン・・・
その一音が、部屋の中に小さなぬくもりを広げていきます。
冬は、心が内側に向かう季節。
だからこそ、音がやさしく響く。
外の寒さと対照的に、
心の奥に静かな火がともるようです。
夜、窓の外に雪が舞う。
その白い静けさに包まれながら、
そっとウクレレを鳴らす。
音が雪に吸い込まれていくようで、
世界が少し優しくなった気がします。
冬の音は、静けさの中の希望です。
まとめ|季節とともに生きるということ

春の風。
夏の光。
秋の香り。
冬の静けさ。
季節は巡り、音も巡ります。
そしてその音の中には、いつも「今」があります。
ウクレレを弾くということは、
季節と一緒に生きるということ。
自然のリズムを感じ、
心の音を聴くということ。
ポロ~ン・・・
たった一音でも、そこに季節が宿ります。
その音が、誰かの心に届くかもしれない。
あるいは、自分自身を優しく包むかもしれない。
音は、時間を超えて残ります。
春の記憶も、夏の笑顔も、秋の涙も、冬の祈りも。
すべてがひとつのメロディの中に生きていく。
ウクレレは、人生の小さな伴奏者です。
明るい日にも、静かな夜にも、
その音は、変わらずそっと寄り添ってくれる。
季節とともに生きるということ。
それは、音とともに生きるということ。
そして、心をやさしく奏でながら、
今日という日を丁寧に生きるということ。
🍃
四季がめぐるように、音もまためぐります。
ウクレレの一音が、あなたの季節を包み、
日々の暮らしに小さな光をともしますように。
